街角などでも気軽に受けることができる献血ですが、タトゥーを入れている人は献血をすることができないことがあります。
ここではタトゥーを入れていると献血ができない理由。
そしてタトゥーを入れることによって発生する感染症などのリスクについて紹介していきます。
タトゥーがあると献血NGってほんと?
タトゥーのみならずピアスを開けている人でも献血を拒否されることがあるという噂を耳にしますが、実際に献血を行なっている日本赤十字社では、このような献血のルールがあります。
タトゥーや刺青の類を入れた場合は少なくとも6ヶ月間はご遠慮いただいています。それ以降は問診医の判断によりご協力をお願いしております。
これは東京都の場合ですが、大阪府の赤十字血液センターでも同様のルールが設けられていました。
他にも赤十字血液センターは全国にあるのですが、場所によってはタトゥーを入れてから6ヶ月ではなく、1年間献血はNGと定めているところもあります。
つまり、タトゥーを入れた場合は献血を受ける地域にもよりますが、6ヶ月~1年の間は献血をすることができないというわけです。
さらにこの期間が過ぎてから献血を受ける場合でも、医師の判断が必要になってくるのです。
なぜ献血できないの?
なぜタトゥーを入れるだけで献血への協力に制限が出てしまうのかというと、タトゥーを入れることによって肝炎等のウイルス感染が起こってしまう可能性があるからです。
肝炎等の病気は感染者の血液を介することによって感染するケースがあります。
タトゥーを入れる場合は皮膚に針を刺すため針に血液が付着します。
本来であればこの針はタトゥーを入れるごとに新品に取り換える必要があります。
しかしこの針は値段も高く、消毒をして複数の人に使いまわすことがあるのです。
このときにしっかりと消毒がされておらず、同じ針を使った人の中に肝炎などのウイルスに感染している人がいれば、血液を介して気付かないうちにウイルスに感染してしまうことになるのです。
このようにタトゥーを入れることでウイルスに感染した人が献血を受けた場合、献血によって採取された血液を介して他人に感染が拡大する危険があります。
こういった理由からタトゥーをしている場合、献血を断られることがあるのです。
感染症のリスク
タトゥーを入れることによって血液によるウイルス感染を引き起こしてしまう危険があり、具体的には次の3つの病気への感染の可能性が高まります。
C型肝炎
C型肝炎はタトゥーを入れた人が最も発症しやすい感染症だといわれており、感染することによって主に肝臓に炎症があらわれます。
ただし肝臓は体の中でも病気の症状を自覚しづらい臓器であるため、肝炎に感染してもなかなか気付けないことが多いのです。
他にも肝炎としては、A型肝炎、B型肝炎などが存在しており、すべて肝臓に炎症を起こすのですが、炎症の程度や継続期間に違いがあります。
C型肝炎はA型肝炎やB型肝炎と比べて炎症の度合いが弱いうえに、慢性的なものになる場合が多いです。
自覚できる症状としては倦怠感や食欲の低下などがありますが、これらの症状も「なんとなくそう感じる」という程度のものが多く、他の病気と勘違いしたり単なる体の不調ととらえてしまうことがほとんどです。
このようになかなか自覚することが難しいC型肝炎ですが、症状が長引いて重症化していくと肝臓がんに発展してしまうことがあります。
B型肝炎
C型肝炎と同じように肝臓に炎症が起こる病気ですが、B型肝炎はC型肝炎よりも炎症の度合いが強く、倦怠感や食欲不振、嘔吐といった症状があらわれます。
肝炎の中には、病気の進行が急激で肺不全になってしまう「劇症肝炎」という状態があるのですが、B型肝炎のウイルスに感染すると他のA型肝炎やC型肝炎より高い確率で劇症肝炎を発症してしまいます。
エイズ(後天性免疫不全症候群)
HIVウイルス(ヒト免疫不全ウイルス)に感染することによって引き起こる病気がエイズです。
エイズを発症すると体の免疫細胞が破壊されてしまうため、体の免疫力が極端に低下します。
そのため普段はかからないような病気にもかかりやすくなってしまい多くの病気を併発する危険性が高くなります。
エイズになった状態で他の病気を発症してしまうと体の免疫力が低下しているため、治療しても完治することが難しくなってしまうのです。
梅毒
梅毒トレポネーマというウイルスに感染することによって発症する感染症が梅毒です。
性行為によって感染するケースが多いですが、タトゥーの針を使いまわすことで感染することもあります。
梅毒は感染してからどれくらいの期間が経過したかによって症状も変化します。
感染初期は皮膚に痛みのないしこりができるだけなのですが、感染から10年程度経過すると心臓や血管、神経、目などに重い障害が発生します。
ただし、現在では治療薬の発達によりここまで重い症状が発症するケースは少なくなりました。
このようにタトゥーを入れることによって、気付かない間に血液感染を引き起こし、重大な病気を発症してしまう危険があるのです。
血液検査のすすめ
タトゥーを入れることによって血液感染症を発症する危険性があると考えると、確かに献血を受けられないということにも納得できます。
それ以上に自分が血液感染症になっていないかどうか気になる事でしょう。
そのためタトゥーを入れた場合は必ず血液検査をすることをおすすめします。
タトゥーアーティストも血液検査をしている
ここまでの話でタトゥーを入れる人が血液感染を起こしてしまう危険性があることは分かっていただけたと思います。
しかし、実はタトゥーを入れる人以上にタトゥーを彫るタトゥーアーティストのほうが血液感染を起こしてしまう危険が高いのです。
なぜならタトゥーアーティストは何百、何千という人にタトゥーを彫るためその分ウイルスに感染した血液に触れてしまう可能性も非常に高いからです。
こういった理由からタトゥーアーティストは普段から定期的に血液検査を行い、自分自身が血液感染をしていないかを調べて、安全に施術ができるように配慮しているのです。
病院での血液検査
タトゥーアーティストも行なっている血液検査を行う場合、最初に考えるのが病院の受診です。
C型肝炎やB型肝炎に感染しているかを確かめる場合は内科や消化器科、梅毒やエイズに感染しているかを確かめる場合は皮膚科、泌尿器科、性感染症科で血液検査をすることが可能です。
ただしこれらの病気に感染しているかどうか調べる場合は、「ウインドウピリオド」の存在を頭に入れておく必要があります。
ウインドウピリオドとは、感染初期の状態で血液検査をしても感染しているかどうかが正確に判断できない期間のことをいいます。
このウインドウピリオドの期間も含めて考えると、タトゥーを入れてから最低でも3ヶ月程度経過してから血液検査をすることをおすすめします。
保健所での血液検査
C型肝炎、B型肝炎、梅毒、エイズの血液検査は病院で行うことができますが、梅毒とエイズは病院以外でも保健所で検査をすることができます。
病院で梅毒とエイズの血液検査をする場合は検査費用がかかりますし、名前も医師に教える必要があります。
しかし、保健所を利用すれば検査費用もかからず、匿名で血液検査をすることができるのです。
ただしこの場合でも病院と同じようにウインドウピリオドを過ぎてから検査をしないと正確な検査結果が出ないので、その点には注意しましょう。
若い人にとってはタトゥーはオシャレでかっこいいというイメージが強く、軽い気持ちで入れてしまいがちです。
しかしタトゥーを入れることによって感染症にかかってしまう危険性があり、献血ができなくなってしまうこともそうですが、なにより自分の命が危険にさらされてしまう可能性もあります。
もしタトゥーを入れたら必ず一度は血液検査をするようにして、感染症によるリスクを減らすようにしましょう。
まとめ
- タトゥーを入れた場合は献血を受ける地域にもよるが、6ヶ月~1年の間は献血をすることができない。
- タトゥーを入れることによって血液によるウイルス感染を引き起こしてしまう危険があり、複数の病気への感染の可能性が高まる。
- ウインドウピリオドを過ぎてから検査をしないと正確な検査結果が出ないので、タトゥーを入れてから最低でも3ヶ月程度経過してから血液検査をする。