タトゥーがファッション目的以外に利用されていることをご存知ですか。例えば、特定のメッセージを伝えてQOLを向上させる目的などにも利用されています。
このページでは、様々な用途で用いられているタトゥーの例を紹介しています。タトゥーのイメージが変わるかもしれませんよ。
タトゥーに対する社会的な認識って?
日本では、タトゥー=刺青という認識が強く、タトゥーを入れたご本人がファッションだと言い張ったとしても、”一般社会とは別の場所で生きている人”という認識を持たれ、特異な目で見られることが多くなります。それは一体、どういうことなのでしょうか?それは、日本の歴史を辿ってみるとよく分かります。
江戸時代の日本では、”人物を識別する”ことを目的として、刺青の分化が発展したといわれています。
たとえば、火消しや鳶職などの方々が”江戸の粋”を表現するために刺青を入れることもあったようですが、その一方で、罪を犯した方がその代償として入れられる刺青も存在していました。実はこの部分が、平成の現代に至ってもタトゥーが悪いイメージにつながるルーツになったと考えられています。
さらに明治時代になると、鳶職などの一般職の方々は刺青を避けるようになり、その代わりに反社会的勢力団体に属する方々が、属する組織への忠誠心を示すために刺青を入れ始めたといいます。
つまり、現在でもタトゥー=刺青=反社会的勢力団体に属している、または関係のある人間という認識を持たれてしまうことが多いということです。
または、反社会的勢力団体に属している方と同様の考え方を持っている、あるいは反社会的勢力団体に対して憧れの念を抱いている、このように解釈されることも少なくはありません。
現在では、徐々にタトゥーが市民権を得始め、タトゥーに対して理解のある方も増えてきたといいます。ですがその一方で、タトゥーが入っているというだけで企業の就職試験に落されたり、温泉やスーパー銭湯、プールなどの公共施設への立ち入りを断られたりする例も珍しくはありません。
海外ではともかく、日本ではタトゥーに対する考え方がまだまだ厳しいというのが現状です。これからタトゥーを入れようとお考えの方は、世間の認識をきちんと頭に入れ、タトゥーが今後の人生に大きな影響を及ぼす可能性についても、真剣に考えておく必要があります。
ですが、タトゥーによって救われる方もまた、存在しており、そこにはファッションという意味合いとはまったく異なった理由が存在しています。
持病の表示となるタトゥー
メディカル・タトゥーと呼ばれる種類のタトゥーで、命を脅かす危険性を秘めた持病、例えば心臓疾患やアナフィラキシーショックのような緊急性の高いアレルギー疾患、てんかん、喘息などをお持ちの方に対して入れることがあります。
下記に、ペースメーカーを示すデザインのタトゥーの写真を載せておきます。
ではなぜ、このような疾患をお持ちの方に対してメディカル・タトゥーを入れる必要があるのでしょうか?
これらの持病で万が一の発作が起こると、身体を動かしたり言葉を発したりすることが困難になることもあり、そのようなときには、医療関係者が患者に対して、どのような持病があるのか?という識別を素早く行い、緊急処置をしなければなりません。
たとえば、心臓に疾患をお持ちの方が救急車の出動を要請したとしましょう。この場合では、救急車が到着するまでの間に症状が悪化し、患者が救急隊員に対してご自身の症状を伝えることができなくなってしまうことも考えられます。このようなときに、救急隊員がメディカル・タトゥーを確認することにより、適切な病院へ患者を搬送して直ちに緊急処置を行うことができますね。
このように、ひとつの尊い命を救う、大切な役割を持ったタトゥーがあるということも、私たちは知っておかなくてはなりません。
乳がんによる乳房切除後のタトゥー
女性であれば誰にでも起こりうるのが、乳がんの発症です。
乳がんは、発見されたステージが早ければ大事に至ることは少ないと考えられていますが、症状が悪化した、または悪化する恐れがあると医師が判断した場合には、乳房の全摘出手術が行われることがあります。女性にとって乳房を失うというのは、これ以上ないといってもいいほどの苦しみを味わうことになります。
こうしたとき、乳がんによって乳房を失った女性に、光を投げかけてくれるタトゥーがあります。
これは、米国のタトゥーアーティストが考案したもので、タトゥーによって乳首や乳輪を作りだすことにより、以前の状態のように見えることを狙いとしています。
たとえば、乳房形成手術などによって乳房の膨らみそのものは取り戻したとしても、乳首や乳輪が存在していない状態は不自然で、それを毎日目にしている患者にとっては、大きなストレスの原因となることは間違いありません。ですが、タトゥーでそれらの色を入れてしまえば、以前のような自然な乳房が戻ってきたように思え、患者のストレスは大幅に軽減されて行くに違いありません。
傷跡を隠すタトゥー
DVやなんらかの暴行によってできた傷は、身体の表面だけではなく、心の内部にも深い傷となって残ります。
ですが、身体の表面の傷に華やかなタトゥーを入れたらどうでしょうか?
身体の傷も心の傷も完全に元の状態に戻すことはできないかもしれませんが、タトゥーによって身体の表面の傷が目立たなくなれば、患者のトラウマは徐々に回復に向かうのではないでしょうか?
これはリストカットでも同様で、現在では精神の状態が安定しているとしても、リストカットの傷跡を見てしまうと当時の状況が蘇ってしまうことがあります。
このようなタトゥーは全体的にサイズが大きめになることが多いようで、海外ではすでに、なんらかの理由によって傷を負った女性に対して、無償でタトゥーを入れるタトゥーアーティストも存在しています。
片耳が聞こえないことを示すタトゥー
事故や病気によって聴力を失ってしまった方は、世界中に数多く存在しています。そのような方々の支えとなるのが、片耳の聴力を失っていることを示す、ミュートボタンです。
聴力障害は目視ですぐに確認できるものではなく、それを認知していない方が聴力を失った方に話しかけた場合では、話しかけられた側は反応することができず、話しかけた側からすると「無視された」と、誤解してしまうこともあるでしょう。
そのようなときに、耳の後ろにミュートボタンがあったらどうでしょうか?
話しかける側は、ミュートボタンがない反対側の耳に向かって話しかけることができますよね?
これにより、お互いに気まずい思いから解放されることになります。
タトゥーが持つ悪いイメージが払拭されることはないかもしれませんが、タトゥーの中には、その方の命を救ったり、心の傷を癒したりする重要や役割を持つものもあります。
日本では、このようなタトゥーの認知度はまだまだ低い状況ですが、ファッションではない、尊い役割を持ったタトゥーの存在があるということは、一人でも多くの方が知っておくべきでしょう。