ケロイドにお悩みの方は多いはず。注目の対策として挙げられるのが漢方の柴苓湯です。
柴苓湯には、どのような効果を期待できるのでしょうか。効果と服用方法、副作用などを解説します。
併せて、柴苓湯以外で用いられている内服薬も紹介します。ケロイド対策の参考にしてください。
ケロイド治療にも使われる「柴苓湯(さいれいとう)」とは

引用元:ツムラ
今回紹介するのはケロイド治療にも用いられる漢方薬は「柴苓湯(さいれいとう)」というものです。
漢方薬というのは、様々な生薬を組み合わせて配合されており、これらの生薬がそれぞれの漢方薬が持つ効果を支えています。
柴苓湯には、次のような生薬が配合されています。
- 柴胡(サイコ)
- 半夏(ハンゲ)
- 黄ごん(オウゴン)
- 甘草(カンゾウ)
- 人参(ニンジン)
- 茯苓(ブクリョウ)
- 生姜(ショウキョウ)
- 桂皮(ケイヒ)
- 猪苓(チョレイ)
- 蒼朮(ソウジュツ)
- 白朮(ビャクジュツ)
- 沢瀉(タクシャ)
柴胡や黄ごんといった生薬には炎症を鎮める作用が、猪苓や茯苓には利尿作用があり、柴苓湯を飲むことで下痢や嘔吐、むくみといった症状を改善できます。
しかし、それ以外にもケロイドの改善効果も期待されており、病院での治療の際にも処方されることがあります。
なぜ下痢や嘔吐などの症状改善に用いられる柴苓湯が、ケロイドの改善に用いられるかというと柴苓湯が「漢方のステロイド」と呼ばれているからです。
ケロイドの炎症を抑える方法として、ステロイド剤を利用することがあります。
ステロイド剤というのは、臓器の副腎皮質から分泌されているステロイドホルモンを人工的に作ったものです。
皮膚のケロイド部分などに炎症が引き起こされる場合には、プロスタグランジンという物質が体内で合成されています。
つまりこのプロスタグランジンの分泌を抑えられれば炎症も抑えられることになります。
プロスタグランジンは組織成分として存在しているアラキドン酸から、酵素であるシクロオキシゲナーゼの作用を受けることによって生成されます。
ステロイドホルモンには酵素であるシクロオキシゲナーゼの働きを抑制する作用があるため、プロスタグランジンの分泌を抑えられ、ケロイドの炎症も抑制できるのです。
そのため「漢方のステロイド」とも呼ばれている柴苓湯を服用することで、ステロイドの炎症を抑えられる効果が期待できます。
柴苓湯は漢方薬ですが、病院で処方される場合には顆粒状のものを処方され、服用する場合には水やぬるま湯に溶かすだけなので手間もかかりません。
服用時の注意
これはどんな薬にも言えることですが、どんなに効能が素晴らしい薬でもなにかしらの持病を患っている場合には、処方された薬を飲むことで持病が悪化してしまう危険があります。
そのため医師の診断を受け漢方薬を処方してもらうときには、必ず持病の有無を告げるようにしましょう。
また、飲み合わせとしては甘草を多く含む「芍薬甘草湯」などの漢方薬と一緒に飲んだ場合、手足のしびれなどが発生する「偽アルドステロン症」などがあらわれることがあります。
普段から継続して飲んでいる漢方薬や薬がある場合にも、飲み合わせによる副作用を防ぐために医師にそのことをしっかりと告げて、危険がないかどうか確認しましょう。
食前、食間に服用
用法容量は人によって異なりますが、基本的には成人であれば1日9.0gの柴苓湯を2~3回に分けて、食前もしくは食間に水かぬるま湯に溶かして飲みます。
意外と間違えてしまいやすい人も多いため、「食前」「食間」の正しい意味も解説しておきましょう。
- 食前
食前というのは、食事の30~60分前のことをいいます。
多くの人は「食前」と書いてあるとご飯を食べる直前に飲んでしまいますが、これは間違いです。
本来の意味の「食前」であれば胃の中は空っぽになっているため、薬の吸収も良くなります。
しかし、漢方薬は食べ物と混ざり合ってしまうと効き目が弱くなるという特徴もあるため、漢方薬を飲んですぐに食事を食べてしまうとせっかくの効果も半減してしまうことになります。
- 食間
食間というのは、読んで字の通り食事と食事の間のことをいいます。
具体的にはそれぞれの食事を食べ終わってから2時間経った頃に薬を服用するようにするといいでしょう。
費用はどれくらい?
柴苓湯にもいくつか種類がありますがツムラが製造している「ツムラ柴苓湯エキス顆粒」は、1gあたり47.70円かかります。
基本的には1日9gを服用するため、1日にかかる費用は429.3円となります。
1ヶ月(30日で計算)服用するとなると12,879円ほどかかることになります。
ただし、この値段は保険の適用の有無によっても変わりますし、人によって1日あたりの服用量を変更されることもあるため、この値段の限りではありません。
柴苓湯の副作用
漢方薬は一定期間飲み続けることが前提とされており、病院などで処方される一般的な薬と比べるとすぐに効果は現れづらいですが、その分副作用は出づらくなっています。
とはいっても、そこはやはりその人の体質などによっても変わってくるところでもあり、柴苓湯を服用することで発生する副作用としては次のようなものがあげられます。
- 胃のむかつき、食欲の減衰
- 発疹、かゆみ
- 偽アルドステロン症…だるさ、ふるえ、手足のしびれ、血圧の上昇など
- 関質性肺炎…息切れ、息苦しさ、発熱、咳
- 肝障害…食欲不振、吐き気、尿の色の変化(茶褐色)
柴苓湯が合わなかった場合
初めて柴苓湯を服用した場合には、胃のむかつきや食欲の減衰を感じることがあります。
こういった症状はある程度柴苓湯を飲み続けることで慣れてくるのですが、どうしても症状が辛くて飲み続けられないというときには、医師に相談しましょう。
また、他にも偽アルドステロン症、間質性肺炎、肝障害などの初期症状があらわれた場合にもすぐに服用を中止して、医師の判断を仰ぎましょう。
柴苓湯以外の内服薬
今回はケロイドの炎症を抑える効果が期待できる漢方薬「柴苓湯」について紹介してきましたが、ケロイド治療に用いられる内服薬には「リザベン(一般名:トラニラスト)」というものもあります。

引用元:病院検索のここカラダ
リザベンにはケロイド特有の皮膚の異常な盛り上がりの原因と考えられている「TGF-β1」という物質を抑制する作用があるため、ケロイド治療の内服薬として処方されることがあります。
またケロイドができてしまったときに特に困るのが、突然襲ってくるかゆみです。
このかゆみの度合いはケロイドの大きさやその人の体質によって様々ですが、場合によってはこのかゆみのせいで眠りにつけなくなってしまうほどです。
なぜケロイドの部分が異常にかゆくなるのかというと、そこには「ヒスタミン」というアレルギー誘発物質の分泌が関わっています。
リザベンにはこのヒスタミンをはじめとした複数のアレルギー誘発物質の分泌を抑制する働きもあるため、ケロイドのかゆみも抑えられるのです。
手術療法、放射線療法、ステロイドの塗布、ステロイドの局所注射、内服薬など、ケロイドの治療方法は様々あります。
それのら治療法の中でも漢方薬の「柴苓湯」は劇的な効果は望めませんが、副作用が非常に少ないという大きなメリットがあります。
「ケロイドを治療したいけど、手術は怖い…。かといってステロイドも副作用が心配で…。」と悩んでいる人は、柴苓湯の服用を考えてみるといいかもしれません。
まとめ
- 柴苓湯はケロイドの改善効果も期待されており、病院での治療の際にも処方されることがある漢方薬。
- 何かしらの持病を患っている場合には、処方された薬を飲むことで持病が悪化してしまう危険があるため、処方してもらう時には必ず持病の有無を告げるようにする。
- 基本的には成人であれば1日9.0gの柴苓湯を2~3回に分けて、食前もしくは食間に水かぬるま湯に溶かして飲む。
- 「柴苓湯」は劇的な効果は望めないが、副作用が非常に少ないという大きなメリットがある。