多くの方に利用されているタトゥーのレーザー治療。具体的に、どのような治療なのでしょうか。タトゥーのレーザー治療のメカニズムと期待できる効果を解説いたします。併せて、レーザー治療で出来る傷跡やレーザー治療の痛みの程度、治療を受ける前に理解しておきたいポイントも解説いたします。
以上に加え、押さえておきたいのが最新のレーザー治療であるピコレーザーです。このレーザーは、従来のレーザーとは異なる特徴を有します。この点についても詳しく説明いたします。
このページを見れば、レーザー治療の特徴やレーザー治療のメリット・デメリットなどを理解することができます。レーザーでタトゥーを除去したいと考えている方はチェックしておきましょう。
レーザーによるタトゥーの除去治療のメカニズムって?
医療機関で取り扱っているレーザー治療器には2種類があり、色素に反応を示すタイプと、水分に反応を示すタイプに分類されてます。タトゥー除去の際に使用されるのは、色素に対して反応を示すレーザー治療器です。
では、レーザー治療器はどのようにしてタトゥー除去を行うのでしょうか?
まず、レーザーをタトゥー部分に照射すると、タトゥーの色素にレーザーが吸収されて、その部分に熱が発生します。すると、それによってタトゥーの色素が粉砕され、マクロファージ(貧食細胞)が砕け散った色素を食べることにより、色が薄くなっていきます。
また、皮膚の深い部分にまで入り込んでいない色素の場合では、皮膚のターンオーバー機能によって経年とともに徐々に薄くなっていきます。
また、タトゥー除去治療に使用されるレーザー治療器には「Qスイッチヤグレーザー」、「Qスイッチルビーレーザー」、「CO2(炭酸ガス)レーザー」などがあり、これらのレーザー治療器は黒色や紺色などの濃い色に反応する性質を持つことから、多色使いされていないタトゥー除去に対して効果を発揮すると考えられています。
また、特殊な存在としては「ピコレーザー」があり、このレーザー治療器の場合では、多色使いのタトゥー除去にも対応するという特徴を持っています。
ピコレーザーが多色のタトゥー除去に対応する理由
タトゥー除去で注目を集めつつあるのがピコレーザーです。最大の特徴は、黒色や紺色など濃色以外の除去を得意としていること。同じレーザー治療器でありながら、なぜ様々な色に対応できるのでしょうか。
ピコ―レーザーがタトゥーを除去する基本的なメカニズムは同じです。違いは、パルス幅と呼ばれる単位(時間の長さ)。一般的なレーザー治療に用いられているレーザー治療器のパルス幅はナノ秒ですが、ピコレーザーのパルス幅はピコ秒です。ナノ秒は10億分の1秒、ピコ秒は1兆分の1秒に等しい時間の単位です。つまり、ピコレーザーは、一般的なレーザー治療器より短いパルス幅で照射を行えます。
レーザー光には、パルス幅が短いほど細かな色素に反応する特徴があります。よって、パルス幅の短いピコレーザーでは、これまで破壊できなかった色素も破壊できます。例えば、従来のレーザー治療器では破壊できなかった皮膚の奥深くに潜む色素や緑色・青色といった色素も破壊できます。
以上の理由から、ピコレーザーは様々な色のタトゥーに対応できます。タトゥーを除去したい方にとって、魅力的な選択肢といえるでしょう。
効果とは?
「レーザーでタトゥーを消すことができます」というような広告を見かけることがありますが、レーザー治療だけでタトゥーを完全に消すことは難しいとされていますので、レーザー治療を受けたとしても、完全に元の状態になる保証はないと考えておくことがベストです。
つまり、レーザー治療器によるタトゥー除去の治療においては、タトゥー完全に消すのではなく、薄くするために行う治療であるということです。
ではなぜ、レーザーでは完全にタトゥーを消すことができないのでしょうか?
そこには、とても簡単なメカニズムが存在しています。レーザーの照射経験を持たない皮膚にレーザーを照射した場合では、ダイレクトにレーザーが色素に届き、色素が粉砕されていきます。
ところが、何度もレーザー照射し続けていると、徐々レーザーが届きにくい状態となり、効果が薄れます。というのは、レーザーでのタトゥー除去は、皮膚にヤケドを起こさせて行う方法であるため、ヤケドを繰り返すうちにその部分の皮膚は厚くなり、レーザーが届きにくい状態が作り上げられていくからです。
つまり、「レーザーでタトゥーを消すことができます」というのは不適切な表現であると捉える必要があり、それを鵜呑みにしてしまわないことが大切であるということです。
レーザー治療でのタトゥー除去をお考えの方は、レーザー治療に対して”タトゥーを薄くするための治療”という認識を持ち、完全にタトゥーを消し去る効果は期待しないほうが無難でしょう。
また、レーザー治療の効果が現れてくるのは約2~3カ月後となりますので、2回目の照射が必要な方は、それ以降に再治療を行うことになります。
痛みや傷跡って?
皮膚をメスで切開すると聞くと、いかにも痛そうで怖いですよね?
ですが、メスでの切開手術の場合では事前に麻酔を施しますので、手術時に痛みを感じることはありません。メスで皮膚を切開する手術の場合では、手術中よりも、むしろ手術後の麻酔切れの際に発生する痛みに対する対応を行わなくてはなりません。
では、レーザー治療ではどの程度の痛みを感じるのでしょうか?
まず、レーザー治療タトゥー部分に人工的なヤケドを負わせて行われるものであるため、激痛を伴います。また、医療機関によっては希望により麻酔を施すところもありますが、多くの医療機関では、麻酔なしでレーザー治療を行います。
そして、気になるのが傷跡の問題ですね。
レーザー治療でタトゥー除去を行っている医療機関の中には、「傷跡は目立ちません」という説明を行っているところもあるようですが、レーザー治療の原理を考えるのであれば、皮膚に人工的にヤケドを起こさせるわけですから、傷跡が全く残らないとは考えにくいのではないでしょうか。
また、そもそもタトゥーを入れる段階で、針によって皮膚が傷つけられていますので、も完全に元の状態に戻すことは難しいとも考えることができます。
そして、注意して頂きたいのは、レーザー治療でタトゥーが完全に消える確率は極めて低いという説明なしに、レーザー治療を行っている医療機関です。
このような医療機関に捕まってしまうと、半永久的にレーザー治療を勧められることにもなり兼ねませんので、レーザー治療によるタトゥー除去の限界についても、きちんと説明を行う医療機関を選ぶことが大切です。
こんな人におすすめ!
まず、黒色などの単色で、小さいタトゥーを入れている方におすすめです。
たとえば、手の甲や手首、方などのワンポイントタトゥーなどは、比較的早く薄くすることが可能であると考えられています。
そして、顔にタトゥーを入れている方にもおすすめです。タトゥーを除去する治療法には、レーザー治療のほかに、切除治療、植皮治療、削皮治療がありますが、これらは傷跡が残る確率が高いため、顔のタトゥー除去に対しては不向きです。
また、薄い色のタトゥーが入っている方の場合では、一般的なレーザー治療ではレーザーの反応が弱く、改善効果を期待することができない場合もあります。
このように薄い色のタトゥーが入っている方にはピコレーザーによる治療がおすすめですが、全国的にピコレーザー治療器取り扱っている医療機関が少ないです。そのため、ピコレーザー治療器でのタトゥー除去をお考えの場合では、まずピコレーザー治療器を取り扱っている医療機関を探すところから始める必要があります。
ただし、ピコレーザー治療器であっても反応が弱い色もありますので、やはり、レーザー治療だけでタトゥーを完全に消すことは難しいと考えておくべきでしょう。
最新のレーザー治療が良い?
一般的なレーザー治療器は、黒、青、深紅などの濃い色に強く反応しますので、これらの色のみのタトゥーであれば、一般的なレーザー治療器で対応することができます。
また、ピコレーザー治療器は最新のレーザー治療器として注目を集めつつありますが、性能の部分では、一般的なレーザ治療よりも優秀な結果を残すことができるのでしょうか?
ピコレーザー治療器は、さまざまな色に反応するという特徴を持っているため、一般的なレーザー治療器で対応することができなかった色であっても薄くすることは可能です。
たとえば、一般的なレーザー治療器の場合では、緑色や紫色、明るい赤色などの色に対する反応が弱いとされていますが、ピコレーザー治療器の場合では、これらの色にもしっかりと反応しますので、薄くする効果を期待することができます。
ただし、このように優秀な性能を誇るピコレーザー治療器であっても、やはり苦手とする色は存在しています。その色とは、黄色。一般的なレーザー治療器と比較した場合には、ピコレーザー治療器のほうが黄色に対する反応は強いといわれています。
さらに、他の色よりも反応が弱いため、その部分の色が浮いたような形で残ってしまうこともあります。
ですが、現在のところではさまざまな色に対応することができるのがピコレーザーだけですので、全体的に見た場合では、ピコレーザー治療器がいちばんおすすめできる治療器であると考えることができます。
タトゥーをレーザーで除去するメリット・デメリット
タトゥーのレーザー治療には以上の特徴などがあります。最後に、レーザー治療のメリットとデメリットを整理します。
レーザー治療のメリット
レーザー治療の代表的なメリットは次の通りです。
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- 傷跡が残りにくい
最大のメリットとして挙げられるのが、傷跡が残りにくいことです。この点が、切除法・植皮法・削皮法との大きな違いです。例えば、切除法では真っすぐな傷痕などができます。身体に傷痕を作りたくない方にとっては有力な選択肢になります。
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- 体に負担を掛けにくい
同様の理由で、身体に負担をかけにくい点もメリットとして挙げられます。メスを使わないので、ダウンタイムはほとんどありません。シャワーは当日から、入浴は翌日から行えることが多いようです。これまで通りの日常生活をつづけながらタトゥーを除去したい方などにお勧めです。
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- 大きなタトゥーを除去できる
小さなタトゥーから大きなタトゥーまで除去できる点もレーザー治療のメリットです。大きなタトゥーを除去できる理由は、身体に負担をかけないから。また、施術する部位も選びません。顔に入れたタトゥーや皮膚に余裕がない場所に入れたタトゥーなどにも対応できます。
レーザー治療には以上のメリットなどがあります。これらの点に魅力を感じる方は検討を進めると良いでしょう。
レーザー治療のデメリット
タトゥーのレーザー治療にはデメリットもあります。治療の選択肢に加えている方は確認しておきましょう。
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- タトゥーを完全に消すことは難しい
最も大きなデメリットとして挙げられるのが、タトゥーを完全に消すことは難しい点です。基本的には、タトゥーを消す治療ではなく薄く・目立ちにくくする治療です。また、レーザーの種類によって苦手な色もあります。肌を元の状態の戻せると思っていると、治療の結果に満足できないかもしれません。心配な方は、治療を受ける前にどの程度まで薄くなるか確認しておきましょう。
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- 治療に激痛を伴うことがある
メスを使わないので痛みは少ないと思われがちですが、実際は治療に激痛を伴うことがあります。レーザーが色素に反応して熱を発するからです。局所麻酔を行う切除術と比べると治療中の痛みはレーザー治療の方がはるかに痛いとされています。痛みが心配な方は、麻酔の使用を検討するとよいかもしれません。
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- やけど痕が残るかも
レーザー治療では熱でタトゥーの色素を破壊します。よって、治療を受けるとやけどと同じ状態になります。酷い場合は、タトゥーの図柄と同じ形のやけど跡が残ります。また、色素沈着や色素脱失を起こし、肌がまだらになることもあります。仮に、タトゥーのインクをきれいに消せたとしても、肌が元通りに戻る保証はありません。
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- タトゥーの除去に時間がかかる
基本的に、1回のレーザー治療でタトゥーを除去することはできません。除去にかかる時間はケースにより異なりますが、お店で入れたタトゥーであれば12回以上の施術が必要になるといわれています。施術のペースは1カ月に1回程度が多いので、タトゥーを除去するまで1年以上かかる計算になります。すぐにタトゥーを消したいと考えている方に、お勧めできる治療法ではありません。
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- 施術回数と効果は比例しない
施術を重ねれば重ねるほどタトゥーは消えていくと思われがちですが、施術回数と効果は比例しません。どちらかというと、施術回数と効果は反比例します。施術を重ねるほどやけど跡がひどくなり、レーザーが色素に届きにくくなるからです。ケースによっては、やけど跡だけがひどくなることもあります。
レーザー治療には以上のデメリットなどがあります。レーザー治療を検討している方は、これらの点も押さえておきましょう。