傷跡を残さない対策として保湿が有効といわれています。なぜ、このように言われるのでしょうか。
その理由を解説するとともに傷跡に安心して塗布できる保湿クリームを紹介します。さらに、セルフケアで傷跡が消えない場合の対処法も説明します。
このページを見れば正しい傷跡の対処法が分かるはずです。
傷跡の回復に保湿が大事だといわれる理由
極端に深くない傷であれば、これといったケアをしなくても体の自己修復機能によって傷は勝手に治って傷跡も消えてしまいます。
しかしいくら自己修復機能で治せる程度の傷だとしても、深さの度合いによっては傷を治すことはできても傷跡が残ってしまうケースもあります。
特に女性にとってはこういった傷跡は極力残したくないものであり、そのためには傷跡をしっかりと保湿することが大事になります。
傷跡の回復に保湿が関係している理由を順を追って説明していきます。
肌のターンオーバーを活性化させる
傷跡と保湿の関係を理解するためには、まずは肌のターンオーバーという働きを理解する必要があります。
私たちの体を覆っている皮膚は、いくつものタンパク質の層で形成されています。
このタンパク質の層は大きく3つに分類でき、最も外側にある層から順番に「表皮」「真皮」「皮下組織」という名前がついています。
最も外側にある表皮もさらに4つの層に分類でき、外側から「角質層(かくしつそう)」「顆粒層(かりゅうそう)」「有棘層(ゆうきょくそう)」「基底層(きていそう)」という名前がついています。
表皮はこの4つの層で構成されていますが、表皮の最も内側に存在する基底層では、常に新しい細胞が生み出されます。
そうすると本来基底層にあった細胞が新しく生み出された細胞に押し上げられて、基底層の上にある有棘層へと移動します。
すると今度は有棘層に本来あった細胞も基底層から上がってきた細胞によって押し上げられ、顆粒層へと移動します。
これが繰り返されると最終的には、皮膚の最も外側にある角質層の細胞が体の外に垢として排出されます。
これが肌のターンオーバーという働きであり、この働きのおかげで新しく清潔な肌を常に保てているのです。
そしてターンオーバーの働きによって、ある程度の傷跡であれば時間の経過とともに徐々に目立たなくなってくるのです。
傷跡が目立つ原因はいくつかありますが、多くの場合は傷ができたときに体の防衛反応で分泌されるメラニン色素の傷跡への沈着が原因です。
メラニン色素は紫外線の光を浴びると黒っぽく変色する性質を持っており、この変色したメラニン色素の色は通常の肌の色とは異なるため傷跡が目立ってしまうのです。
メラニン色素が皮膚のどの層に沈着するかは傷の深さによって変わってきますが、例えば傷が浅くメラニン色素が顆粒層に沈着したとします。
肌では一定の周期でターンオーバーが繰り返されているため、顆粒層に沈着して傷跡を目立たせる原因となっていたメラニン色素は、下から押し上げられてきた細胞によって少しずつ顆粒層の上の角質層へと移動します。
そして最終的には、傷跡に沈着していたメラニン色素も他の細胞と同じように垢となって体の外に排出され、傷跡が目立たなくなるのです。
このように肌のターンオーバーの働きがあるおかげで、一度出来てしまった傷跡でも目立たなくなるのですが、実はターンオーバーの周期は生活習慣の乱れなど様々な影響をうけて乱れてしまうことがあるのです。
当然肌のターンオーバーの働きや周期が乱れてしまえば、その分傷跡もなかなか消えない状態になります。
そんなときにターンオーバーの働きや周期を正常にしてくれるのが、「保湿」なのです。
ターンオーバーを正常に保つには
今回はターンオーバーの働きを正常に保つために大切なことの中でも「保湿」に絞って話を進めていきますが、他のポイントもここで簡単に紹介しておきましょう。
- 食生活
コレステロールや脂肪が含まれている食品を多く摂取していると、血流が悪くなりターンオーバーが乱れてしまいます。
栄養バランスの取れた食事を摂ることが理想的です。
- 睡眠
ターンオーバーは睡眠の最中に行われます。
そのため、夜更かしや寝不足を正してしっかりと良質な睡眠をとることが大切です。
- ストレス対策
ストレスを受けると体の中では副腎皮質ホルモンが分泌され、ターンオーバーを起こすケラチノサイトの増殖が抑制されてしまいます。
ストレスをためないこと、自分なりのストレス発散方法を持っておくことも大切です。
- 禁酒
お酒を飲むとアルコールを分解するために水分を消費して肌が乾燥するうえに、ターンオーバーに必要なエネルギーまで不足してしまいます。
その他にも肌に良い効果をもたらすビタミンCやビタミンEが分解されてしまうため、ターンオーバーにとってお酒は天敵ともいえる存在なのです。
- 禁煙
タバコを吸うと毛細血管が収縮し、血流が悪化します。
また活性酸素が対内で生成されるため、肌の老化が進みターンオーバーの機能も衰えてしまいます。
このように肌のターンオーバーを正常に保つには保湿以外にも様々な要素が必要になるため、傷跡を治すためには保湿に加えて今回紹介した対策も忘れてはいけません。
顔のスキンケアと同じように水分は必須
それでは傷跡と保湿の話に戻りましょう。
傷跡を回復させるための肌を保湿する方法はいくつかありますが、最も身近なものとしては化粧水や美容液を使う方法があります。
女性にとっては身近な存在の化粧水や美容液ですが、配合されている保湿成分の種類はいくつかあります。
中でもおすすめの保湿成分は「セラミド」です。
他にも保湿成分としてはコラーゲンやヒアルロン酸など有名ですが、これらはひとつひとつの分子が大きいため、皮膚の内部に浸透しづらいのです。
一方セラミドはコラーゲンやヒアルロン酸と比べると分子のサイズが小さいため、皮膚の内部に浸透しやすくその分保湿力も高いと考えられています。
そのため顔に傷跡が出来た場合はもちろんですが、体に傷跡が出来たしまった場合でもセラミドが配合されているボディケア商品などを利用したほうが傷跡の治りをよくできるのです。
水分で保湿した後にクリームで蓋をする
傷跡に化粧水などで水分を与え、保湿をした場合は保湿クリームを塗って上から蓋をすることで保湿効果をさらに高められる可能性があります。
ただし顔に油分が多い保湿クリームを多く塗ってしまうと、ニキビなどの肌トラブルの原因になることもあるので控えるようにしましょう。
そもそもセラミドが配合されている化粧水は、他の化粧水と比べると高い保湿力を誇っているため、顔の傷跡が気になる場合に限っては、デメリットも考慮して保湿クリームで蓋をする必要はないという考え方も広まっています。
「保湿」作用がありつつ傷跡に安心な保湿クリームは?
傷跡を治すために保湿が重要なのは、ここまでの説明で理解していただけたでしょう。
しかし、保湿をするために傷跡に薬や市販の美容液などを塗った場合には、副作用が発生する可能性も出てきます。
なぜなら傷跡が出来てからあまり時間が経過していない場合は、その部分だけ皮膚が敏感になっていることがあるからです。
そう考えると、傷跡を保湿する場合にはなるべく副作用の心配が少ない保湿クリームを使った方が良いのです。
いくつか傷跡にも安心して使える保湿クリームを紹介します。
ワセリン
ワセリンは保湿クリームの中では、最もシンプルな商品のひとつです。
肌に油分を与えることで、外部の刺激から肌を守ってくれるだけでなく乾燥も防いでくれます。
最近では傷を乾かさないで治す「湿潤療法」が認知されてきており、この湿潤療法でワセリンを使う機会が増えています。
原油を精製することでワセリンは作られるのですが、この精製の度合いによって大きく「白色ワセリン」「黄色ワセリン」に分けられます。
白色ワセリン
ワセリンの色は中に含まれる不純物によって変化します。
不純物が少なく肌への刺激も少ないのが白色ワセリンです。
そのため肌が荒れやすかったり、敏感肌だと感じている場合は白色ワセリンをおすすめします。
白色ワセリンは種類が豊富なので値段も商品によって変わってきますが、50g程度で400~500円程度で購入することもできます。
黄色ワセリン
黄色ワセリンは白色ワセリンに比べて、精製度が低く不純物が多くなります。
そのぶん白色ワセリンよりは肌への刺激は強くなってしまいますが、一般的にはその違いを肌で感じるのは難しいです。
値段も50g程度で200~300円程度となっているので、特別肌荒れなどの不安がない場合には黄色ワセリンでも十分でしょう。
アットノン
アットノンは小林製薬株式会社から販売されている商品で、傷跡を目立たなくする効果があります。
上で紹介したワセリンはあくまで保湿作用しかありませんでしたが、アットノンには傷跡の保湿だけでなく血行促進作用や抗炎症作用も含まれているため、肌のターンオーバーを促進してくれます。
15gで希望小売価格が1,404円(税込)なのでワセリンに比べると高いですが、製品自体が目立つ傷跡への使用を推奨しているのでおすすめです。
ヘパリンZクリーム
ヘパリンZクリームはゼリア新薬から販売されている商品で、昔から傷跡を消す市販薬としては有名でした。
有効成分のヘパリンナトリウムには患部の血行を促進する効果があるため、ターンオーバーの促進が期待できます。
ただしアットノンとは違い保湿作用が弱い傾向にあるため、白色ワセリンと組み合わせて使う人が多いようです。
18gで希望小売価格が1,124円(税込)なので、アットノンと比べると内容量が多く値段も安いとなっているためお買い得となっています。
保湿しても傷跡が消えない場合はどうすればいい?
ここまで傷跡を保湿することを強くおすすめしてきました。
しかし、残念ながら傷跡をしっかりと保湿すれば、どんな傷跡でも消えるというわけではありません。
あまりにも傷跡が深かったり、傷跡に沈着したメラニン色素が紫外線をあびすぎて濃い色に変色してしまっている場合などは、肌の保湿をしてターンオーバーを促進しても対処できないケースもあります。
そういった場合は、やはり傷跡修正を専門としているクリニックの受診をおすすめします。
専門のクリニックであれば民間療法では太刀打ちできなかった傷跡にも十分対応可能です。
とはいっても専門のクリニックでの傷跡修正は、費用が高額になってしまうこともあります。
それに比べて今回紹介した保湿するという方法は、時間こそかかりますが高額な費用はかかりません。
もし傷跡がそこまで深くなく、特に傷跡修正を急いでない場合には一度今回紹介した方法を試して、効果がないようであれば専門のクリニックの受診を検討するといいでしょう。
無料カウンセリングを行っているクリニックなどの一度相談するのも良いかもしれません。
傷跡修正の無料カウンセリングを行なっている中央クリニックの公式サイトはこちら
まとめ
- 傷跡が目立つ原因はいくつかあるが、多くの場合は傷ができたときに体の防衛反応で分泌されるメラニン色素の傷跡への沈着が原因。
- ターンオーバーの働きを正常に保つためには「保湿」以外にも、食生活、睡眠、ストレス対策、禁酒、禁煙なども大切。
- 顔に傷跡が出来た場合はもちろん、体に傷跡が出来たしまった場合でもセラミドが配合されているボディケア商品などを利用したほうが傷跡の治りをよくできる。