生活の中でふとした拍子に体にできてしまう傷。
すぐにでも傷そのものを治したいのはもちろんですが、できれば傷跡もなるべく残らないようにしたいですよね。
そのために知っておきたいのが、傷のゴールデンタイムです。
今回は傷跡ができる原因とその対策について紹介します。
傷が残る原因って何?
誰でも人生で一度は体に傷を作ってしまったことがあるでしょう。そして、よくよく体を見てみるともう何年も前にできたはずの傷の跡が残っているという人も多いはずです。
なぜきれいさっぱり消えていく傷がある一方で、跡がはっきりと残ってしまう傷があるのでしょうか?
傷跡が残る原因には、傷の深さと肌の新陳代謝(ターンオーバー)が関係しています。
人間の皮膚は表面から順番に「表皮」「真皮」「皮下組織」と呼ばれる3つの層で成り立っています。
そして皮膚の表面にある表皮は新陳代謝が活発で、およそ4週間ほどで細胞が生まれ変わるようになっています。
細胞が生まれ変わるということは、表皮のもっとも表面にある細胞が最終的に垢になって身体から剥がれ落ちていくということです。
そのためこの表皮についた傷=浅い傷は、新陳代謝によって元の肌と同じような肌が再生され、傷跡が残らないのです。
しかし、表皮の下にある真皮の部分まで到達するような深い傷の場合は違います。
表皮の新陳代謝のサイクルがおよそ4週間だったのに対し、真皮の新陳代謝のサイクルは2~6年もかかるのです。
表皮に傷がついた場合は短いサイクルの新陳代謝によって傷が治って、肌も再生していきます。
一方真皮に傷がついた場合、表皮に傷がついたときのように新陳代謝による傷の再生を待っていたらいつまで経っても傷が治りません。
そのため少しでも早く傷をふさぐために、傷口の周辺に肉芽組織という細胞がたくさんあらわれます。
この肉芽組織は通常の皮膚細胞とは色も異なり、毛穴やメラニン細胞が存在しません。
つまり肉芽組織によって傷口が塞がれることによって、傷口には本来の肌とは異なる肌ができてしまうため、一部分だけ白光りして見えたりして傷跡になってしまうのです。
またこのように肉芽組織によってできた傷は、外部からの刺激・紫外線などの影響を受けやすいという特徴もあります。
よく子どもの頃についた古傷が残っているという話を聞きますよね。
人は大人になると様々なことを学習するので、真皮にまで到達するように傷をつくることは少なくなります。
しかし子どもの頃は何が危険なのか判断がつかずに、深い傷を作ってしまいやすいです。
だから子どもの頃にできた深い傷跡が大人になっても残っていることがあるのです。
傷のゴールデンタイムって?
傷がどのようにして治るのか、そして傷跡がなぜ残るのか簡単に説明しましたが、みなさんは「傷のゴールデンタイム」というのをご存知ですか?
傷のゴールデンタイムとは、簡単にいうとその傷口が縫合できるかできないかの基準になる時間のことです。
肌に傷ができてから6~8時間以上が経過すると、その傷は常に感染しているものとして考えられます。
この状態で傷を縫合してしまうと、縫合したことが原因となって二次的な細菌感染などが発生する危険があります。
そのため傷ができてから6~8時間以上経過した場合は、傷口を縫合することができないのです。
しかし傷ができてから6~8時間以内であれば傷を縫合することができ、この時間のことを傷のゴールデンタイムと呼んでいるわけです。
ちなみに顔の場合は他の部位に比べて血流が良いため、ゴールデンタイムは24時間以内となっています。
ではなぜ傷を縫合する必要があるのでしょうか?
それは傷を縫合することによって、傷跡を残しにくい、あるいは目立ちにくくできるからです。(痛みを減らす、感染を予防する効果もあります。)
傷口は縫合されずにひらいてしまっている状態だと、当然のことですが細菌感染が発生しやすくなってしまいます。
そして縫合して治療するよりも多く肉芽組織が増えてしまい、傷跡として残ってしまうケースが出てきます。
そのため、傷は縫合したほうが跡が残りづらいのです。
もちろん最初にも書いたように比較的浅い傷(表皮についた傷)の場合は、縫合をしなくても肌のターンオーバーによって傷跡は消えるため無理に病院を受診する必要はありません。
しかし傷口が開いてしまうくらいの深い傷ができてしまった場合には、ゴールデンタイムのうちに病院を受診したほうがいいでしょう。
そうすることで傷跡を少しでも目立たせなくできるのです。
傷跡が残らないようにするためにできること
傷跡について色々な紹介をしてきましたが、最後は傷跡が残らないようにするためにできる4つのポイントを紹介します。
深い傷ができたらすぐに病院に行く!
上でも紹介しましたが、傷が深い場合はたとえ傷が治ったとしても傷跡は残ってしまいます。
これを回避するためには、ゴールデンタイム、つまり傷ができてから6~8時間以内(顔の場合は24時間以内)に病院を受診して、傷口を縫合してもらう必要があります。
そのため、深い傷ができたらまずは病院を受診することを考えましょう。
新陳代謝を正常に保つ
傷を治すためには、肌の新陳代謝機能が欠かせません。
表皮にできた傷であればおよそ4週間程度で新陳代謝によって傷跡も消えていきます。
しかしこの新陳代謝の機能が乱れたり衰えてしまっていると、それだけ傷の治りも遅くなり、傷跡も残りやすくなってしまいます。
つまり新陳代謝を正常に保つことも傷跡を残さないために必要なことなのです。
新陳代謝を正常に保つために特に気をつけたいのは、食事の栄養バランスとストレス対策の2点です。
特に意識して摂取したい栄養は、次の通りです。
- ビタミンA(緑黄色野菜)
- ビタミンB群(豚肉、大豆、卵、まぐろ、かつお)
- ビタミンC(いちご、みかん、ブロッコリー、ほうれん草、白菜)
- ビタミンE(ごま油、アボカド、赤ピーマン、ナッツ類)
- 亜鉛(ゴマ、牡蠣、牛肉)
- セラミド(こんにゃく、ブロッコリー)
もちろん他の栄養素とあわせてバランスよく摂取することが大切です。
さらに人間にとってストレスは必要不可欠なものですが、過度なストレスを受けてしまうと自律神経の働きに悪影響が出て、新陳代謝の働きも悪くなってしまいます。
とはいってもストレスを受けない生活をするのは無理があるので、自分なりのストレスの解消法を見つけたり、リラックスできる環境を整えておくことが大切になります。
紫外線対策は徹底的に!
傷口をふさぐためにできた細胞は紫外線の光に敏感に反応するため、周辺の部位と色が違くなり目立ちやすくなってしまいます。
そのため傷口や傷跡はなるべく直射日光に当たらないようにして、常に紫外線対策を心がけるようにしましょう。
かさぶたをいじらない!
傷の治りかけにあらわれるかさぶた。
ついつい剥がしてしまいたくなりますが、これをはがすと傷の治りが悪くなり、傷跡も残りやすくなります。
服にひっかかったりなにかと気になってしまう気持ちは分かりますが、時期がくれば勝手に剥がれ落ちるので、自分でいじったりするのはやめましょう。
特に女性にとっては傷跡は残したくないものです。
比較的浅い傷なら肌の新陳代謝機能によって傷跡も残りづらいですが、大きく深い傷となるとどうしても傷跡が残る可能性が高くなってしまいます。
深い傷ができてしまったらゴールデンタイムが過ぎてしまう前に病院を受診して、適切な処置を受けるように心がけましょう。
それが最も効果的な傷跡を残さない方法です。
まとめ
- 傷跡が残る原因には、傷の深さと肌の新陳代謝(ターンオーバー)が関係している。
- 傷ができてから6~8時間以内であれば傷を縫合することができ、この時間のことを傷のゴールデンタイムと呼んでいる。
- かさぶたをはがすと傷の治りが悪くなり、傷跡も残りやすくなる。